他の欧州主要諸国に比べるとスペインでの販売数は少し劣る。しかし、スペイン語対応は絶対に外せない。なぜなら、メキシコとアメリカに住む莫大な数のヒスパニック系をカバーしているからだ。

実は、アメリカにおける購入者の結構な割合はヒスパニック系で、言語設定は英語ではなくスペイン語の端末だったりもする。

メキシコでの販売数も好調だ。ブラジル以外の南米諸国はスペイン語圏なので、「その他」の統計にはかなりの数のスペイン語バージョンが含まれる。iPhoneは南米全域で展開しているので、スペイン、フランス、イタリアもコンスタントに有料アプリの売上があがる国だ。スマホマーケットにおけるiPhoneのシェアが高いのだろう。人口規模の割りにはよく売れる。フランス語は本国以外にはカナダのケベック州エリアやアフリカ圏で使用されているが、アフリカでの売上はあまり期待できない。

ロシアも手堅く売れるので外せない。ここもiPhoneの普及台数が多いのかもしれない。

中国は、都市部の物価水準や人口を考えればもっと売れてもいいのではないかと思うのだが、現時点ではそれほど売上があがらない。本国でのiPhoneの本格的な展開がこれからというのも一因だろう。ただ、まだまだこれから伸びる余地が大きいのと、中国語を母国語とする人は本国以外にも非常に多い(華僑/移民)ので、中国語版は用意したほうがいいだろう。香港、シンガポール、マレーシア、インドネシア、もちろん日本やアメリカにも多くの中国人、中国系の人が住んでいるのだから。

あと、ちょっと意外なのは韓国。いちはやくブロードバンドを普及させたネット先進国の韓国で、なぜかアプリはあまり売れない。筆者も複数のアプリで韓国語バージョンをリリースしてみたのだけど、思ったほどは数が出なかった。まったく売れないというわけではないのだが、ローカライズする労力を考えれば、わざわざ韓国語バージョンをつくらなくてもいいだろう。

北欧諸国は、ITリテラシー、ネット普及率が高いことでも有名だ。ここでもアプリは売れる。しかし、なんといっても人口が少ないので、数が出ない。そのうえそれぞれ言語が違う。あまり売上個数が期待できないのに、スウェーデン語、ノルウェー語、フィンランド語、デンマーク語を用意するというのは、費用対効果を考えるとちょっと厳しい。まあ、これらの地域の人達はみな英語が堪能なので英語版を出しておけばいいでしょう、ということで対応言語から除外。

それ以外には、ギリシャ、ベトナム、タイ、マレー、インドネシア、トルコといった言語に対応したアプリも用意していろいろ売ってみたけれど、どうも売上はパッとしなかった。というか、ローカライズの労力にまったく見合わなかった。だから特にこれらの言語に対応しなくてもいいと思う。

ただし、これらの国では普及が一気に進んだり、経済が急激に発展したりもするので、あくまでも現時点では対応しなくていいという意味で考えてほしい。将来的には伸びる可能性もある。

また、有料アプリではなく、無料アプリの場合だと事情はちょっと違ってくる。無料アプリの場合、特にベトナムやマレーシアあたりで非常に多くダウンロードされるので、対応したほうがいいだろう。

最後に同じ言語の地域による違いをどうするべきか考えてみる。対象となるのは、「英語」と「イギリス英語」、「スペイン語」と「ラテンアメリカ版スペイン語」、「ポルトガル語」と「ブラジル版ポルトガル語」、「簡体字中国語」と「繁体字中国語」だ。

ローカライズというのはそれなりに作業労力がかかるので、筆者の場合は両方のバージョンをつくることは基本的にはやらないようにしている。英語、スペイン語、ポルトガル語の場合、せいぜい大阪弁とNHK日本語くらいの違いしかないのではないかと勝手に想像しているからだ。

凝りだしたらキリがないというのもある。もちろん、苦労してつくったアプリなんだから、しっかり多言語対応してできるだけ販売機会を得たいという考えも間違っていない。だから、好みで決めてもらっていいと思う。丁寧にローカライズしてもよし、筆者のように手間を惜しんで省略してもかまわない。

なお、中国語の場合は大阪弁とNHK日本語程度の違いというわけにはいかない。両者の漢字表記はかなり異なっている。iPhoneでは中国本土で使われる「簡体字中国語」と、台湾、香港、マカオあたりで一般的な「繁体字中国語」の2種類の言語設定ができるのだが、筆者の場合は手間を考えて「簡体字中国語」のみ作成している。もちろん「繁体字中国語」の市場もそれなりにあるので、両方用意してもかまわない。

以上が、国別言語別の傾向となる。基本的に、有料アプリは経済的に豊かな先進国で売れるという傾向はある。しかし、メキシコ、ブラジル、ロシアといった国でも販売数は好調なので、一概に経済力や所得水準ばかりで売上が決まるというわけでもない。

ほかにも人口、iPhone端末普及率、ブロードバンドやWifiの普及率、Android端末とのシェア争い、回線使用のためのコスト、PCやMacといったコンピューターの普及率など、さまざまな要素がからんでくるので、やっぱり「売ってみないとわからない」ということなのだ。

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